270Tensegrity Manual

270Tensegrity Manual

修士研究のケーススタディとして制作された大型のテンセグリティ球体。
直径2mの人の背丈を超えるサイズであり、正二十面体を分割した270本の圧縮材からなる。このテンセグリティに加え、制作の過程で得た実践的知見がわかりやすい図版と文章で270本のテンセグリティ・モデリング・マニュアルとしてまとめられた。
このテンセグリティは5種類の基本ユニットからなり、それらの寸法値はフラーの特許図面から理論値が導出された。その理論値から具体的な加工方法に応じて、実制作用の加工寸法に調節された。また、ユニットの接続方法を正十二面体と関連付けることで単純化し、組み立て手順の効率化が図られた。
そのほか、単一部材を一工程で大量生産することができる治具も制作された。

写真掲載:https://www.axismag.jp/posts/2023/09/556555.html


フラーの理論値と自らの経験知から270テンセグリティを実制作する

テンセグリティの提唱者であるバックミンスター・フラーが発表した特許”TENSILE-INTEGRITY STRUCTURES “(1962, B. Fuller)の中には、270本の圧縮材(棒)からなる球体テンセグリティのそれぞれの部材長を球体の直径から計算する方法が記述されている。しかし、実際に制作する際の材料の加工方法や、大型テンセグリティの施工方法まではカバーしていない。このプロジェクトではフラーの理論値に加えて、自身のテンセグリティ制作から得た経験知を用いて、実際の部材の加工方法・組み立て方法を考案した。実際の部材の寸法や加工方法を理論値に反映させ、加工時に使用することができる実際値を導出した。


加工・組み立て課程のコツをマニュアル化する

270テンセグリティはその名の通りに、270本の棒材とそれらをつなぐワイヤー材からなるテンセグリティである。必要量の棒材とワイヤー材の切り出し・加工を効率よく行うため、実際に行った工夫・コツを記録し、それらを写真や図でまとめてマニュアル化した。


2m級のテンセグリティの組み立て方・分割ユニットを多面体の特性から考案する
① 大型テンセグリティの組み立て方法

このテンセグリティを組み立てる際には本体を空中に吊りながら行った。組み立てが完了した後は組み立てに使用した吊元を継続して活用し、完成したテンセグリティを天井に設置した。高所作業をできる限り減らす工夫として、高さを調節できる吊元を作ることで、組み立て段階に応じて高さを調節する他、作りかけのテンセグリティを休憩時には天井に持ち上げ、ほかの学生の制作、作業スペースの導線を妨害しないことも目指した。
左の図のように、①天井から落ちる大吊元のロープ②高さ調節用のロープの2種類のロープを作成し梁に渡した。
天井からのロープにシャックルを取り付け、そのシャックルにテンセグリティ本体を吊るすロープを通し、上げ下げする。

② 多面体の特性から分解ユニットを考える

本テンセグリティは正二十面体を球面分割したグリッドを圧縮材に置き換えている。このグリッドを正二十面体の相対関係にある正十二面体のジオメトリと関連付けると、星形・五角形、一種類の辺に分割することができた。この分割方法をテンセグリティの組み立て時のユニットに活用した。
また、ジオメトリを直感的に理解するために、フラー特許にカラーでマーキングした。ここで使用したカラー情報は5種類のユニットを区別するマーキングに活用した。