
原宿のノースフェース新規店舗に展示するテンセグリティのアートワーク。
店舗名「Sphere」にちなみ、直径約1.2mの球体テンセグリティが設計された。90本のバフ仕上げのアルミパイプが細いワイヤーによって接続されている。吹き抜け空間にぽっかりと浮かぶ、洗練された佇まいのアートワークを目指した。
この球体テンセグリティは正三角形面をもつ60面体に「Rotegrity」という操作をすることで、形状が決定されている。
また、本体のアルミパイプはモニュメントやインテリアなどを手がける株式会社鎚絵によって製造された。テンセグリティはワイヤーの張力を構造全体にバランスよくかける必要があるのだが、その際のテンション調節機構などをできる限りシンプルに収める方法を鳴川研究室と鎚絵で検討した。
山下は鳴川研究室メンバーとして携わった。
新規店舗のコンセプトを表すアートワーク
新規店舗には「個人の集合である社会、サステナブルを実現するための緩やかなつながりを生み出すための拠点となること」を目指し、「Sphere」と名がつけられた。設置するアートワークは定期的に様々なアーティストの作品に差し替えられる。今回は初回として新店舗「Sphere」のコンセプトを体現するようなアートワークが期待された。テンセグリティはすべての棒材がワイヤーによって接続され、テンションのバランスによって形状を保つ。このテンセグリティの接続性と「Sphere」のコンセプトが重なり、初回のアートワークは90本の棒材とワイヤーのテンションによって球/Sphereの形状を保つテンセグリティが設計された。





完成品。制作:鎚絵株式会社 設計:慶應義塾大学鳴川研究室
Detail
テンセグリティはテンションのバランスによって、形状を担保する構造であるため、テンション(張力)を調節できる機構が必須だ。一般的なテンセグリティでは、ターンバックルをワイヤー材の方に取り付けてテンション調節を行うが、今回はアートワークとしての佇まいを損なわないよう、ターンバックルの機構を棒材の方に落とし込んだ。


上) ネジをゆるめた状態。ネジをゆるめる方向に回すことで棒材全体の長さが変化し、テンションの調節が可能。その後Bパーツを締めて固定する。
下) すべてのネジを締め切った状態。棒材の長さが一番小さい

実際に使用された棒材部品
棒材:アルミパイプφ9mm バフ仕上げ
ワイヤー材:ステンレスワイヤー φ1mm
棒材製作:株式会社鎚絵

Aパーツにワイヤーを通す。その後イモネジで固定する。
【POLE – マーキング位置作図】

一本の棒材にワイヤーを一周させ1ユニットとなる。ワイヤーには、それぞれの棒材がとりつく位置にマーキングを施した。

本製作の前に試作として作成された木の丸棒のテンセグリティ
